アスベストが健康に及ぼす悪影響5個
アスベストは、別名石綿とも呼ばれ、その実は鉱物のついた細かい繊維です。 主に建築資材として使われてきましたが、健康に害を及ぼすことがわかったため、 現在では使用が原則禁止されています。 アスベストの健康被害でなりやすくなる病気は代表的なもので5つです。1.中皮腫
人間の内臓には内側に膜が張られており、それを「中皮」といいます。 この中皮に腫瘍(がん)ができてしまうのが「中皮腫」と呼ばれるものです。 ほとんどがアスベストが原因と言われています。 症状は、胸の痛みや咳、肺に水がたまる、肺が押さえつけられたように感じる(胸部圧迫感)など、 他の病気でもありがちな症状です。 したがって、中皮腫を早期発見するのは難しいと言われています。 この病気の恐ろしいのは、アスベストに直接触れる職業の方だけでなく、 アスベスト工場の周辺にお住まいだった住民の方にも発病が見られる点です。 発症までの期間は25年から長い場合は50年もかかると言われています。 また、がんといえばたばことの因果関係ですが、 中皮腫に関してはたばこによって発症のリスクが高まるといったことはありません。 アスベストの輸入量のピークから、2030年から2035年にかけてが患者数のピークと言われています。 中皮腫に対する治療法は完全には確立されておらず、一般的ながんの治療法が用いられます。 アスベスト救済給付の対象の病気になっています。
2.アスベストが原因の肺がん
アスベストが原因で普通と同じような肺がんになってしまう場合もあります。 この場合、アスベストが原因で特定の場所にがんができやすいというわけではなく、 一般のがん患者と同じように肺のどの部位もがんができるのが特徴です。 このため、何が原因でがんになってしまったのかわかりづらいということになります。 ちなみに、アスベストでがんになりやすさは統計に出ており、 タバコを吸う人は普通の人の約10倍、アスベストを吸ってしまった人は約5倍。 実はタバコのほうが断然リスクが高いのです。 しかし、両方の条件が重なると実に50倍のリスクを負ってしまいます。 治療は一般的な肺がんと同じような治療になります。 この病気も、アスベストに直接触れる職業の方だけでなく、 アスベスト工場の周辺にお住まいだった住民の方にも発病が見られています。 尚、発症までの期間が数十年単位なのは中皮腫と同じです。 アスベスト救済給付の対象の病気になっています。
3.石綿肺
石綿肺は、大量に吸い込んだアスベストが肺にこびりついて、肺機能が低下してしまうことによって引き起こされます。 はじめのうちは息切れや咳、痰が出やすくなる程度ですが、徐々に進行するにつれ、肺機能が著しく低下していきます。 その結果、気胸(肺に穴が開き空気が漏れる)や胸水(肺に水がたまる)などの病気を合併させる場合もあります。 最終的には在宅酸素療法として常に鼻から酸素を吸い込む状態になることもあります。 石綿肺は、アスベストを取り扱う職業(製造業者や建物の解体業者など)についていて、 大量にアスベストを吸い込んだ場合にだけ起こる病気。 普段生活するなかで起こる病気ではありません。 また、中皮腫や肺がんのように短期間で死に至る病気でもありません。
4.良性石綿胸水
良性石綿胸水は、肺に水(体液)がたまる病気の一種です。 呼吸が苦しい、胸に痛みがあるなどの症状が起こる場合がありますが、 中には何の自覚症状がなく、胸のレントゲン検査ではじめてわかる場合があります。 平均で約3ヶ月で自然に消失することもありますが、胸水を繰り返す場合もあり、 その場合他の病気に移行していくこともあります。 治療法は、胸に針を刺したまった水を抜くものや、ステロイド剤を投与するなどです。 この病気は他のアスベスト由来の病気の発症より早く、約30年程度で発症します。 また、高濃度でアスベストを吸う職業の人でなければ発病しない、いわば職業病です。 胸に水のたまる病気はこれ以外にもたくさんありますから、一般の方は他の病気を疑ったほうが賢明です。
5.びまん性胸膜肥厚
びまん性胸膜肥厚自体は、結核性胸膜炎などさまざまな病気などの原因なることも多いのですが、 アスベストでその発病可能性が高まる病気です。 胸膜と呼ばれる膜は、肺をおおう膜と胸壁をおおう膜との二層構造になっています。 それぞれが病気で変化を起こして癒着してしまい、その部分の厚みが増してしまいます。 これが胸の一定の割合を越えるとこの病気と診断されます。 咳や痰、胸の苦しさが繰り返す、繰り返して呼吸器感染症を発症するなどの症状があります。 特別な治療法はなく、対処療法しかありません。 そのため、徐々に呼吸の機能が低下していき、在宅酸素療法になります。 アスベストが原因でこの病気になる場合は、先に紹介した石綿肺や良性石綿胸水の後遺症として発病する場合が多いです。 それらの病気の早期治療が重要になります。 以上、アスベストの健康被害としてかかりやすい病気を5つ紹介しました。 いずれもアスベストを直接取り扱う人か、昔アスベスト工場があったところの周辺に住んでいた住民以外で、 アスベストの健康被害が起きた例はありません。 ですから、過剰に心配する必要もありません。 ただ、潜伏期間がとにかく長いので、心当たりのある方は毎年の健診を忘れずにして、早期発見につなげることが大切です。